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2019年5月23日 (木)

「白い巨塔」のリメイク版放送に寄せて

 「白い巨塔」と言えば、私が中学生の頃にテレビで放送した山崎豊子原作の医療ドラマだ。巨大な大学病院の教授の座を巡る権力闘争をテーマにし、そこには人間の野望や妬み、さらには憎しみや人間の心の底裏にある本音、そこに利権や欲望が絡み合い、複雑な人間模様を描いたドラマでもあった。
 主役を演じた田宮二郎はハマリ役で、その25年後に唐沢寿明が演じたが、好青年しすぎた印象。時代背景こそ違うものの、「田宮二郎」のような冷徹かつ無表情で演技し、しかも人間臭さや泥臭さを表現した天賦の才能には到底及ばなかった。
  今回、ジャニーズタレントながら、大河ドラマでも主役を張り、演技力に定評のある「岡田准一」が財前外科医を演じるとあって、前評判は上々だった。ニヒルな二枚目で通っていた田宮二郎がB型で、岡田も同じ。もしかすると、人間の奥深い本音をさらけ出す名演技を期待している。自分の目的達成の為には手段を選ばない冷酷さを演じ切って欲しい。

 まずは、1978年に31話に渡る放送の中で、初回と最高視聴率を叩き出した最終回の映像をお送りします。

 次に2003年放映の唐沢寿明主演の最終回を見て比べて欲しいと思う。


  昔の映像は、フィルム撮影というのもあるが、現場が病院だけに、重々しく、命の重みや蠢く欲望などの人間模様が多少なりとも感じ取っていただけた筈だ。志半ばで癌に倒れて病床に伏し、壮絶な闘病の末に死んでいった財前医師。幼い子と妻に看取られて息を引き取った後、廊下に並ぶ医師や看護師たちの間を、亡骸を乗せたストレッチャーが静かに移動し、首を垂れる関係者に見送られるラストシーンは後世までの語り草となった。現に最終回は31%を超える高視聴率を記録した。
 
 私自身は、この作品の最初の配役である「田宮二郎」のイメージが強すぎて、正直、唐沢や岡田の財前役は弱い気がしている。それは時代かもしれないが、現代医療においては、教授の椅子を巡る争いは、当事者以外はあまり魅力がなく、震災があったからこそ、人命優先の医療が先決で、誰もイチ病院内の覇権争いなどに興味が沸かないだろう。

 「ブラックジャック」や「スーパードクターK」、「最上の命医」のような神の手を振るう天才外科医の姿とか、「Jin-仁-」のように時代を超越して過去の時代に舞い降りた外科医が、その手腕を発揮し、死の淵に立たされ、視線を彷徨う患者を劇的に救うような世界観を期待している。

 いずれも患者の生死に向き合う医師としての苦悩はつきもので、それは「白い巨塔」も同様。今回の作品は5回シリーズ完結なので、それまでの経緯とか、日々治療と格闘する医師の本来の姿を描き切れないだろう。それは結論を急ぐ必要があって、あくまで教授の椅子を巡る権力争いのストーリー展開がメインでその場面描写に固執しすぎている。これもまだ11回シリーズならば、多少は描けたかもしれないが、どうしても二番煎じやリバイバル制作の域を脱せないと思う。
 
 しかしながら、田宮二郎は知らなくても、2003年の唐沢寿明の放映から16年が経過し、今回初めてこの作品を見るであろう10~20代の世代にとっては、ジャニーズ俳優が主役を演じるとあっては見逃せないだろうし、話題性はあるに違いない。岡田は「永遠の零(ゼロ)」などの戦争を取り上げた時代映画でも主役を演じ、その演技力は折り紙付き。そして熱狂的な女性ファンが多いのも事実。
 今回の5回シリーズは、ストーリーや結論がわかっているドラマとはいえ、現代風にアレンジしたことで、単なる懐かしさだけでなく、30年たっても癌は、スキルスなど発見が遅れれば死因の第一位を占める不治の病であるのは旧態依然で、今の最新医療がどう立ち向かい、治療に挑むか、死と向き合った際、人間は何を考え、死の間際に何を思うのかという視点で見られたのは幸いだ。誰にでも発病する可能性がある現代病の代表である「癌」。身の回りもそうだが、家族はどうすべきかという点でも参考になることは多いに違いない。

 最後に、1978年版に出演した名優たちで、もう鬼籍に入られて会えない方々をまとめた動画を見ながら結びとしたい。

 そしてDVD化されていれば、二度と会えないとしても、いつでも当時の映像に触れられるという意味では、亡くなっても名優は私たちの記憶の中に生き続ける。

 

 

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