過去のドラフトから
今年もこの季節がやってきた。これまで幾度となくドラマを呼んできたプロ野球ドラフト制度」。プロ入りしたい者は自分の球団を選べない理不尽さ。そして自分の運命をクジに託さなければならない不合理。
しかし、FA制度導入により、ある一定の基準をクリアすれば、国内や海外のFA権を行使し、手を挙げてくれた球団と交渉し、行きたい球団にも行ける道筋が開けているのは周知の事実である。
1965年に始まったこのドラフト制度、今年(2018年)で54回目を迎えるが、これまで数々のドラマを生んできたドラフト制度を振り返れば、いろいろ気づくことがある。今日はそれを紹介したい。
結論から言えば、堅実な選手育成の「広島」、強引な「日本ハム」、スカウトが脳なしの「巨人」、そして幸運な「ヤクルト」と言えるだろう。その根拠を示したい。
1 広島東洋カープ(主な獲得選手)
1972年 ドラフト1位 池谷公二郎
1973年 ドラフト1位 木下富雄
1974年 ドラフト3位 高橋慶彦
1975年 ドラフト1位 北別府学 2位 山根和夫 3位 長内孝
1976年 ドラフト1位 山崎隆造
1977年 ドラフト4位 達川光男
1980年 ドラフト1位 川口和久
1981年 ドラフト1位 津田恒美
1982年 ドラフト1位 西田真二
1983年 ドラフト1位 川端 順 2位 小早川毅彦 3位 紀藤真琴
1984年 ドラフト2位 正田耕三
1985年 ドラフト1位 長冨浩志
1986年 ドラフト3位 緒方孝市
1988年 ドラフト1位 野村謙二郎 5位 江藤 智
1989年 ドラフト1位 佐々岡真司 4位 前田智徳
1991年 ドラフト1位 町田公二郎 4位 金本知憲
1994年 ドラフト2位 嶋 重宣 4位 高橋 建
1996年 ドラフト1位 沢崎俊和 2位 黒田博樹
1997年 ドラフト4位 小林幹英
1998年 ドラフト1位 東出輝裕 6位 新井貴浩
1999年 ドラフト3位 栗原健太
2001年 ドラフト1位 大竹 寛
2002年 ドラフト1位 永川勝浩
2005年 ドラフト3位 梵 英心
2006年 ドラフト1位 前田健太 3位 会澤 翼
2007年 ドラフト3位 丸 佳浩
2009年 ドラフト1位 今村 猛 2位 堂林翔太 育成 永川光浩
2010年 ドラフト1位 福井優也 6位 中崎翔太
2011年 ドラフト1位 野村祐輔 2位 菊池涼介
2012年 ドラフト2位 鈴木誠也
2013年 ドラフト1位 大瀬良大地 3位 田中広輔
2017年 ドラフト1位 中村奨成
2018年 ドラフト1位 小園海斗 4球団競合
記載の通り、スカウトの見る目はピカイチだ。ほとんど上位で指名した選手がレギュラーを獲得し、チームの中心として活躍している。面倒見の良い成長型チームと言えよう。
1978年 ドラフト1位 高代延博
1979年 ドラフト1位 木田 勇
1981年 ドラフト1位 田中幸雄(85年3位で入団)
1983年 ドラフト1位 白井和幸
1984年 ドラフト1位 河野博文
1985年 ドラフト1位 広瀬哲朗
1986年 ドラフト1位 西崎幸広
1987年 ドラフト1位 武田一浩
1988年 ドラフト1位 中島輝士
1989年 ドラフト2位 岩本 勉
1991年 ドラフト2位 片岡篤史
1993年 ドラフト3位 金子 誠
1996年 ドラフト3位 小笠原道大
1998年 ドラフト2位 建山義紀
1999年 ドラフト2位 田中賢介
2003年 ドラフト1位 糸井嘉男
2004年 ドラフト1位 ダルビッシュ有 4位 マイケル中村
2005年 ドラフト1位 八木智哉
2006年 ドラフト1位 吉川光夫 3位 糸数敬作
2007年 ドラフト1位 中田 翔 3位 宮西尚生
2008年 ドラフト1位 大野奨太
2010年 ドラフト1位 斎藤佑樹 2位 西川遥輝
2011年 ドラフト1位 菅野智之(拒否) 3位 石川慎吾
2012年 ドラフト1位 大谷翔平
2014年 ドラフト1位 有原航平
2017年 ドラフト1位 清宮幸太郎
2018年 ドラフト1位 吉田輝星
ここは昔からオーナーのクジ運が強く、パ・リーグ全体に言えることだが、人気スター選手を根こそぎ持って行った。イチロー・清原和博・松坂大輔・ダルビッシュ有・田中将大・斎藤佑樹などだ。日本ハムは特にその傾向が強い。誰かが引退やFAで抜けても、途切れることなく客を呼べるスター選手が入団している。新庄剛志→ダルビッシュ有→斎藤佑樹→大谷翔平→清宮幸太郎といった具合だ。
しかし、日本ハムの弱点はドラフト1位は活躍するが、下位の選手はあまり育っていない。そして「強行指名」が多い。2011年には、原監督の甥の菅野選手を強行指名して、拒否され、浪人生活を余儀なくしたし、翌年にはメジャーリーグ入りしか考えていなかった大谷翔平を強行指名。半ば強引に説き伏せ、入団にこぎつけた。いずれも栗山監督だった。
3 巨人
巨人のドラフト下手を証明するため、平成元年(1989年)以降のドラフト1位だけを見てみたい。
1989年 ドラフト1位 大森 剛 2004年 ドラフト1位 野間口貴彦
1990年 ドラフト1位 元木大介 2005年 ドラフト1位 辻内崇伸
1991年 ドラフト1位 谷口功一 2006年 ドラフト1位 坂本勇人
1992年 ドラフト1位 松井秀喜 2007年 ドラフト1位 藤村大介
1993年 ドラフト1位 三野勝大 2008年 ドラフト1位 大田泰示
1994年 ドラフト1位 河原純一 2009年 ドラフト1位 長野久義
1995年 ドラフト1位 原 俊介 2010年 ドラフト1位 沢村拓一
1996年 ドラフト1位 入来祐作 2011年 ドラフト1位 松本竜也
1997年 ドラフト1位 高橋由伸 2012年 ドラフト1位 菅野智之
1998年 ドラフト1位 上原浩治 2013年 ドラフト1位 小林誠司
1999年 ドラフト1位 高橋尚成 2014年 ドラフト1位 岡本和真
2000年 ドラフト1位 阿部慎之助 2015年 ドラフト1位 桜井俊貴
2001年 ドラフト1位 真田裕貴 2016年 ドラフト1位 吉川尚輝
2002年 ドラフト1位 木佐貫 洋 2017年 ドラフト1位 鍬原拓也
2003年 ドラフト1位 内海哲也 2018年 ドラフト1位 高橋優貴
(青字は期待外れだった選手)
巨人は、ドラフト上位指名選手は育たない。逆指名で高橋由などを獲得したものの、長嶋監督時の松井秀喜や王監督時の桑田強行指名以外はくじ運も悪い。そして何より、スカウト陣がまるでダメ。1位指名した選手が主力で活躍できたのは坂本選手くらいで、常に優勝を義務付けられている巨人はドラフトよりもFA市場や新外人獲得に躍起になっている。しかし、それも全く人を見る目に欠け、巨人に来た途端にダメになるパターンを繰り返してきた。
4 ヤクルト
1982年 ドラフト1位 荒木大輔
1983年 ドラフト1位 高野 光 2位 池山隆寛 3位 橋上秀樹
1984年 ドラフト1位 広沢克己 2位 秦 真司
1985年 ドラフト1位 伊東昭光 2位 荒井幸雄
1986年 ドラフト1位 西岡 剛(入団せず) 2位 土橋勝征 3位 内藤尚之
4位 飯田哲也
1987年 ドラフト1位 長嶋一茂
1988年 ドラフト1位 川崎憲次郎 3位 笘篠賢治
1989年 ドラフト1位 西村龍次 2位 古田敦也
1990年 ドラフト1位 岡林洋一 3位 高津臣吾
1991年 ドラフト1位 石井一久
1992年 ドラフト1位 伊藤智仁 3位 真中 満
1994年 ドラフト2位 宮本慎也 3位 稲葉篤紀
1995年 ドラフト4位 石井弘寿
1996年 ドラフト2位 岩村明憲
1997年 ドラフト2位 五十嵐亮太
1999年 ドラフト2位 藤井秀悟
2001年 ドラフト1位 石川雅規
2002年 ドラフト1位 高井雄平 3位 館山昌平
2003年 ドラフト1位 川島 亮 4位 青木宣親
2004年 ドラフト1位 田中浩康
2005年 ドラフト1位 村中恭兵 3位 川端慎吾
2006年 ドラフト1位 増渕竜義
2007年 ドラフト1位 佐藤由規
2010年 ドラフト1位 山田哲人
2012年 ドラフト1位 小川泰弘
2013年 ドラフト1位 杉浦稔大 2位 西浦直享 3位 秋吉 亮
2018年 ドラフト1位 清水 昇
なんと言っても相馬オーナー時の「黄金の左手」で重複した有力選手の獲得に成功して来た。私自身はスカウト陣の目利きは12球団でも1・2位を争うと思っている、競合を避け、独自の調査で隠し玉を備え、毎年一本釣りを行う西武がもっとも優れていると思っているが・・・・。
しかしヤクルトの選手獲得も見事というほかない。1980年代後半から1990年代前半は野村監督が指揮を執り、黄金期を築いた。おそらく、クジ運だけでなく、本物を見抜く眼力に優れた野村監督の選手選考に関する意向が大きく働いていたことは言うまでもない。
5 ソフトバンクホークス
1994年 ドラフト1位 城島健司
1995年 ドラフト1位 斉藤和巳
1996年 ドラフト1位 井口忠仁 2位 松中信彦 3位 柴原 洋
1997年 ドラフト2位 篠原貴行
1999年 ドラフト4位 川崎宗則
2001年 ドラフト1位 寺原隼人
2002年 ドラフト1位 和田 毅 2位 新垣 渚
2003年 ドラフト1位 馬原孝浩
2005年 ドラフト1位 松田宣浩
2006年 ドラフト1位 大隣憲司 4位 森福允彦
2007年 ドラフト1位 大場翔太 3位 中村 晃
2008年 ドラフト2位 立岡宗一郎 5位 摂津 正
2009年 ドラフト1位 今宮健太
2010年 ドラフト2位 柳田悠岐
2011年 ドラフト1位 武田翔太
2012年 ドラフト1位 東浜 巨 3位 高田知季
2013年 ドラフト1位 加冶屋蓮 2位 森 唯斗 3位 上林誠知
2014年 ドラフト5位 島袋洋奨
2015年 ドラフト1位 高橋純平
2016年 ドラフト1位 田中正義
2018年 ドラフト1位 甲斐野 央 3位 野村大樹
ここも選手を見る目は確かだ。ドラフト1位が順当にレギュラーに定着し、結果を残している。亡き根本睦夫管理部長の手腕は凄かった。
さて、自分の所属チームを選べない不条理な世界。それがNPBの厳しい掟だが、それでも健気にプレーする選手は立派だ。チームが優勝できなくても、自分の役割をベストを尽くして果たそうとしている。チームの成績が不振だからと言って、個々の選手の給料に反映査定するのはおかしいと思う。
今年3割30本100打点を達成した「岡本和真」選手は、4年目にしてやっと才能が開花した。トリプルスリーを複数回達成している山田哲人選手もしかり。ほかにもコンスタントに好成績を残している西武の秋山翔吾選手やソフトバンクの柳田選手もそうだ。彼らは日本の宝であり、いずれ彼らもメジャーを目指すと思うが、移り気にさせないためにもそれ相応の年俸を渡すべきだ。
最後に、巨人はダメすぎ。飼い殺しも多いが、打線が振るわず、エース菅野は何度涙をのんだか知れない10勝11敗で終わった2015年シーズンは、防御率が1.91だった。彼が投げると不思議と打線が沈黙した。次のシーズンも9勝止まりだったが、防御率は2.01という成績だった。それでも10勝できなかったからと言って、給料を下げるのは筋が合わない。6年間で76勝(41敗)、結果を残しているエースなのだから、それ相当の報酬を与えないと、いくら叔父の原監督が説得したところでメジャーへのふた心を抱いてもなんら不思議ではない。
最後に、高校生が大豊作と呼ばれる今年のドラフト会議の交渉権獲得予想をしたい。
根尾→中日 田尾のようなイメージ(的中)
藤原→ロッテ 去年獲得の安田といずれは中軸を打つのは間違いない。 (的中)
小園→広島 相思相愛 地元に近い (的中)
吉田→楽天 吉田はもしかしてくじ運の強い日本ハムが獲得する可能性あり(的中)
柿木→ソフトバンク 柿木こそ巨人に来てほしい
松本→西武 一本釣りの可能性も (的中)
甲斐野→DeNA どうみても名前からしてDeNA向き
上茶谷→ヤクルト
野村大樹→巨人 去年、清宮を外し、原新監督は同じ早実の高校生スラッガーを指名
渡邉勇太朗→日本ハム 大谷、清宮と人気者を獲得している強運で根尾獲得の可能性
梅津→オリックス
辰己→阪神 外れ1位で指名
的中率 5/12
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